9月23日

『三日月ロック』(スピッツ)

シンセサイザーがかっこいい曲が印象的だった。
「あれ、スピッツの曲調ってこんなに電子的だったっけ?」
とも思った。かっこいいからいいんだけど。
5曲目「ババロア」はハウス調の四つ打ちのバッキングだし。
エコーのかけ方だと思うんだけど(声の伸ばし方もあるかな?)、
この曲とか2曲目の「水色の街」とか
くるりっぽいちょっとけだるい感じがあって好き。
1曲目の「夜を駆ける」もかなり私好み。
ギターの感じに80's ブリット・ロックのような陰鬱さがあって
聴いていて静かな気分になれる。
6曲目の「ローテク・ロマンティカ」なんかは
きちんとドラムに力があってロックしてて
曲全体は初期のスピッツに近い感じ。
ここでも、挿入されるシンセは印象的だけど。
9曲目「エスカルゴ」の方が電子的な色合いが少なくて、
スタンダードなロックに近いけど、
曲の盛り上がりにもちょっと欠けてて、
「ローテク・ロマンティカ」の方が私好み。
1曲目の「夜を駆ける」の音節の区切りと
メロディーの区切りをずらしてる感じとか
3曲目の「さわって・変わって」の
少し字余りな歌詞をメロディに乗せてる感じに
大滝詠一を感じてしまう私は
『ロンバケ』の聴き過ぎだろうなぁ。

9月21日

マンガ「冬虫夏草」(おかざき真里)

「バスルーム寓話」もそうだけど、
これも不思議な感覚にとらわれながら
どんどん読み進めていってしまう話。
巻頭の「羽化を待つ人」は彼女が蛹になってしまう話。
設定はトッピなんだけど、
結論は恋愛論の教科書みたいに
恋愛のごくごく基本的な要素に忠実で、
この話の展開の仕方がすごく上手い。
だからこそ読んでてキュンとなったり
感じるものがあるんだけど。
「月下綺譚」とかも面白い。
どうしていいか分からなくて
自分自身を傷つけてやりたいという
衝動に駆られることってあると思う。
その時は、自分のこととか落ち着いて
客観視なんてできないんだけど、
落ち着いたときにこのマンガを読むと、
ここに出てくる登場人物を通して
そういう自分自身を傷つけたい自分を客観視できる。
人間は一人では生きていけなくて、
社会と関わっていかなくちゃいけない以上、
自分自身を傷つけても仕方ないことだって分かる。
自傷って自己完結の行為で、
社会との関わり方を変えることではないから。
そんなことをこの話のラストの一節
「自分を否定する奴もムカつく奴もいない
……ねぇ ひとりていうのはそれだけで完璧なのよ…」
を読みながら私は感じた。
自分を見つめ直したり哲学的に読めるのは、
その登場人物に自分を投影できるからで
つまりリアリティがあるんだと思う。
作品の世界やキャラクターに。

9月16日

映画「ビューティフル・マインド」

自分がそれに強く責任を感じ
人にも言えず懸命に打ち込んできた仕事が、
全て自分の頭の中にしかない妄想で、
周りに何ももたらすことがなかったとしたら。
主人公が国防省から命ぜられて行っていた
ロシアの原爆輸送計画の暗号解読の報告書は
誰も受け取ることのない廃屋のポストの中で眠り続けていた。
この時の喪失感、脱力感に、私も耐えられないと思う。
自分自身は妄想など抱えておらず、正常だと思っているのだ。
それによって妻など周りに
犠牲を強いてきたとしたら尚更だ。
アイデンティティを失い自分も傷付きなお、
妻を傷つけた自分自身を責めさらに苦しむ。
そして、周りからは精神病患者というレッテルを貼られ、
社会の中で溶け込んでいく自信を失くしていく。
自分が統合失調症であることを認め、
前向きに生きていく天才科学者ジョン・ナッシュ教授と
彼を強く支えていく妻。
ナッシュが自分の病気を認識したところから
ラストまでの場面が特によかった。

9月8日

イベント「『デザインの原型』展」

デザインには原型がある。
グラスだったら、手に持ったとき手のひらの中でしっくりくるかとか、
椅子だったら、背もたれにもたれたときにしっくりくるかとか、
製品が製品として愛されるための基本的な機能を支える型。
それらに忠実でありながら、
ありそうでなかったデザイン、少しユーモラスなデザイン、
そうした製品がたくさん展示してあった。
身近な製品だと無印良品の壁掛け式CDプレーヤーとか。
時計だったら針が動いたら人々の目にどう映るかとか、
実際に使うシチュエーションの中で映えるか。
このことをすごく意識しているのがやはりプロだと思った。
人々に使ってもらうものだから、
カタログの中でだけかっこよくても
それでは商品にならないんだよね。

9月1日

映画「イルマーレ」

ポストを介した、2年の時を超えた不思議な文通。
これがこの映画のポイントなんだけど、
この説明でわかるだろうか。
イルマーレという海辺の家の郵便受けを介して
'98年の住人ソンヒョンと'00年の住人ウンジュとが
手紙(時には金魚も!)をやりとりする。
98年当時、ソンヒョンはウンジュを知っていて
ウンジュはソンヒョンのことを知らず、
そうして起こる2人のすれ違いは
観ていて切なくなる。
ウンジュが'98年当時付き合った人と
別れないための協力をソンヒョンに頼むことで
2人の関係が少しずつ変わり始めていくところも
胸がキュンとなる。
「接続」が好きな人には特にお薦め!



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