10月27日

イベント「ロバート・メイプルソープ展」

静けさが彼の作品の良さだと思う。
見ていて内省的にさせるところが。
今日の精神状態があまり良くなかったこともあって、
彼の作品の魅力の裏側である陰気臭さが
見ててムカツいてきたりしたけど、
そんな精神状態で見てもいいものはやはり言い訳で、
花など、カラーの静物写真が気に入った。
彼のカラー作品とか全然興味がなかっただけに、
作品の静物画的な良さが目に飛び込んできた。
果物を写した静物写真があって
それぞれの果物の、背景のえんじのカーテンの、
写真の中の全ての色彩の調和がすごかった。
色の感じが少し均質的でそれが絵画のようだった。
細部の色の差異が映り込まないような写し方をしているようだった。
写真集で見るより写真が大きいから
写真集で見るより構図とかに目に行った。
彼が監督した(撮影は別人)
「STILL MOVING」という映像作品も面白かった。
「パティ・スミスの写真ができるまで」みたいな感じ。
自然体のパティ・スミスが映ってて、
そこには作為みたいなのがあまり感じられないんだけど、
アンディ・ウォーホルの映像作品のように
空間を切り取っただけといった感じではなくて、
写真を写すというテーマが感じられた。
バストショットで頭の位置が全体のどの辺にあるかとか。
東京の大丸ミュージアムでは今月29日まで。
来年1月、心斎橋の大丸ミュージアムへと巡回。

10月5日

イベント「短歌vs川柳 どっちが強い? 七五調バトルロワイヤル」

第1部は枡野さん、益田さんによるトーク。
枡野さんがいかにグサっとくる言葉を言うかとか、お互いの話など。
枡野さんの他人に構いたくなる性格が出てたと思う。
そしてお互いの失恋の短歌、川柳を読み上げて第2部へ。
自作の朗読では、益田さんは新作も発表してた。
枡野さんは既発表作のみ。
第2部は、観客が応募した失恋の短歌、川柳から
枡野さん、益田さんが選んで、その良さについてコメント。
で、選んだ短歌、川柳どちらが良かったかを書店員さんが判断。
(この戦い方、ちょっと詩のボクシングと似て無くもない気がする)
で、結果は短歌が4勝2敗。
勝った作品からそれぞれ優秀作を選んで、
(このとき短歌は野田修平さんの作品が選ばれた)
短歌、川柳の優秀作から真の勝者を決めようとしたんだけど、
書店員さんのジャッジがちょうど半々に別れ両者勝者に落ち着いた。
イベントの流れはこんな感じ。
イベントの感想。
作歌のヒントになる発言が
枡野さんから聞けたのが有意義だった。
「恋は間違ってる」とか。
つまり恋をしている状態って普通の状態じゃないから
お門違いな突飛な発想とかするみたいなことなんだけど。
加藤千恵さんの第二短歌集について
(枡野さんが)よさが分からないものを
(加藤さんが)よいと思って並べるというところに
加藤さんの可能性があるというのは深い発言だなと思った。
加藤さんの作品は読み込めば読み込むほど
何が良くて悪いのかが分からなくなるとか。
これは加藤さんの作品って
ストレートにメッセージが届けるから
そのときの受け手の状態で
共感できたりできなかったり
よく見えたりそうでもなかったりするんだと思う。

10月1日

イベント「9・30樹海―辰巳泰子の世界」

昨日行ってきたイベントの感想を。
イベントの構成は、大きく分けて5つ。
まずキクチアヤコさんの短歌朗読。
そのあと辰巳さんが登場。
エッセイ「シンナーと暴力と」と、処女歌集『紅い花』、
最新作「二十五年のニュースです」を朗読。
休憩をはさんで、辰巳さんの新作39首、
「やさしくて大きなもののために」を朗読。
そして朗読劇「ポータブル・シンドローム」と
「弥生尽日死なせをり ソメイヨシノを まこと明るかりける雷に」。
キクチアヤコさんは第四回フーコー短歌賞受賞作、
『コス・プレ』の中から「月下」という作品群を朗読。
(『コス・プレ』はそのままデビュー歌集として
新風舎から刊行されている)
マラリーが凄すぎたこともあるんだけど(笑)、
最初のイメージより大人しいなと思った。
丁寧に静かに朗読してて。
作品が観客へ届かないと結局、
印象はそのときだけで薄いものとなってしまうから、
作品を届けるという上では、
こういった朗読が一番いいんだろうなぁ。
エッセイは辰巳さんが21−24歳まで
産休などの先生の代わりに
十三や大正区で中学校の講師をやってた頃の話。
欲求に真っ直ぐな子どもたちって
「生」をもっともリアルに表現してるのでは
なんてエッセイを聞きながら思った。
そして、講師をやってた頃に編んだ『紅い花』へとつながる。

地下鉄の揺れにまかせて花束のこぼれさうなる花の名は何  辰巳泰子

作品が次々に朗読されていくので、
大半が私の耳を通り過ぎていってしまうのだが、
上の作品はかなり印象に残った。
日本人拉致問題を詠んだ
「二十五年のニュースです」もかなり面白かった。
皮肉を交えた時事詠って、
その事例を何に例えるか 細かな計算が要求されるなぁと
朗読する辰巳さんを憧れの目で眺めてた。
今回の朗読を聴いて、
他にも作歌の参考になることがあった。
作品のコンセプトの統一とか。
ダウナー系な調子の作品はダウナー系な単語で構成し、
アッパー系な調子の作品はアッパー系な単語で構成するとか。
こうした単語選びが質感となるんだろうけど。
朗読劇は前者がコメディで後者がしっとりした感じで、
感じが違って、それぞれ面白かった。
前者は下ネタがたくさんあって
お酒飲みながら観るロフトプラスワンの雰囲気に合ってたし(笑)。
テレビ役の森本平さんが
狂牛病などを題材に現代を詠んだ作品を
早口に朗読というよりしゃべっていたのが印象的だった。
後者では辰巳さんが和服を着て登場。
開演前にカジュアルな格好をして
挨拶してくださった"おばちゃん"とはえらい違い(失礼過ぎ)。
「辰巳さん、耳の形、綺麗だなぁ」とか
艶っぽさのあまり、細部にまで目に行く始末(笑)。
日本人に生まれてよかったなぁと、
日本語の表現力の深さを感じさせられた朗読劇だった。



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