12月23日

イベント「現代美術への視点―連続と侵犯―」展

インスタレーションが好きな人にはお薦め。
東京では今日で会期が終わってしまった。
来年1月から大阪の国立国際美術館に巡回する。
私は現代美術は好きだが、そう詳しいわけではなく、
最初、解説など何も見ずに観賞してたときは
意味の分からない作品が数多くあった。
ただ、なんだか分からないことがとても刺激的だった。
インスタレーションのような大掛かりな作品ならではの
こうした刺激はぜひ受けたほうがいいので、
これから大阪で見ようと思っている方は
ここから先は読まないほうがいいと思う。
では、展示作品の中から感想をいくつか。
まずは遠藤利克の作品。
「欲動―ナルシス2」
展示室の壁に大きなガラス板が立てかけられている。
明るい部屋の透明な板を、私は目が離せなかった。
「欲動―ナルシス3」
コイルがつながれたヒビの入った1m足らずの鏡。
近づいたときに足を映す鏡と
後ろに下がって私の全身を映す鏡はまるで別物のよう。
ゴミ捨て場にあればそのまま捨てられてしまうである鏡が
展示室の中の様々な要素が合わさって
作品になってることを感じた。
「欲動―海馬3」
展示室の両側に立てかけられた錆びた2枚の鉄板。
そしてコイルから電流が流れる音が展示室に響いている。
この音、鉄の錆び具合に非常に工業的なものを感じた。
稼働している工場で機械の作動音を聞き、
機械の表面を見ているような感覚を受けた。
(作品名に使われている数字は本来はローマ数字)
ジュリアン・オピーの「パリでの休暇」
細長い展示室にキャラクターのポスターの様な平面的な絵。
天井からは音が聞こえる。
展示室を進んでいくとこの音は
波の音からエキゾチックな太鼓の音、
鳥や動物たちの鳴き声と変わっていく。
街中にはいろんなポスターが貼られていて
いろんな音楽が流れている。
でも、街のあちこちにポスターがあって
街のあちこちにスピーカーがあるから
ポスターからの視覚情報と
スピーカーからの聴覚情報が
合っていないことも珍しくない。
ポップな海の絵を見ながら波の音を聴くのって、
街中では出来そうでなかなか出来ないなと
絵を見て音を聴きながら思った。
ロニー・ホーンの「あなたは天気」
展示室の四方に貼られたある少女の100枚の写真。
6週間かけて撮った写真らしいが、
この写真から時間を感じ取ることが出来なかった。
10代の中頃と思われる少女は
表情によって大人にも子供にも見え、
どれが1週目でどれが6週目なのか分からなかった。
100枚の写真を見ながらぐるぐると展示室を歩いても、
どれが写真の始まりでどれが終わりなのか
感じることは出来なかった。
喜怒哀楽に老いとか若さはなくて、
うれしそうな顔や不安な顔など
表情が一定でない写真から
時間軸を探すのは難しい。
人間の表情の伝達力を感じた。
写真の時間軸は感じられないけど、
写真を見てこの少女の感情は
はっきりと感じ取ることができるのだ。

12月21日

新書「パティシエ世界一」(江口博啓・浅妻千映子)

タイトルより副題に惹かれた。
"東京自由ヶ丘「モンサンクレール」の厨房から"。
モンサンクレールはとても有名なケーキ屋さん。
スウィーツ好きな私もここのロールケーキは食べたことある。
モンサンクレールのパティシエ辻口氏のインタビューで構成。
レシピを公開していたり内容がとても充実している。
辻口氏によるスケッチ、説明は彼のこだわりにあふれている。
実際、モンサンクレールのサイトで商品の写真を見ると、
ほんとに商品がきれいで、「食べてみたい」と思う。
(ヴィジュアルはほんとに大切だと思う)
この本でたくさんのケーキが取り上げられてるので
サイトを見ていると「あ、このケーキも本に載ってた!」と
見ていて食べたいケーキがたくさん出てくる。
また、分量とかが細かく載ってて、
これを読んで洋菓子を家で作って欲しいという
辻口氏の気持ちが伝わってくる。
私は全く作らないのでお菓子の作り方には疎い。
基本的な作り方の記述がちょっと少ないので、
(新書のページ数を考えると少し仕方ない)
これを読んだだけでは
基本的な作り方が全く分かっていない私は
お菓子を作るのは難しいが、
そういうのは基本的なのが載っている本を買えば補えるだろう。
ショートケーキには季節に合った果実を使い
イチゴでは勝負をしないとか、
洋菓子を作る時の彼のこだわりは素直にすごいと思った。
(大量生産する大企業だと、市場にあった商品の提供が第一で
たくさんの従業員を雇ってもいるし
こだわりとか言ってられないんだけど)
何故コンクールに出場するかとか、
彼のヴィジョンの持ち方とか目的意識は見習いたいと思った。
一つ気になったのは文体。
インタビューが中心とは言え、
「?」や語尾の「〜よね」連発は読みづらい。



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