セレクション

ここでは音楽を中心にしながらも、 そのほか映画、小説、マンガなど
一つの作品(A Work)を取り上げ、 コメントしていきたいと思います。

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12月31日

映画「ホテル・ルワンダ」

ルワンダ内戦中の実話を基にした映画。
内容は、フツ族の大統領暗殺を契機に
フツ族によるツチ族の大量虐殺が勃発。
ベルギー系資本のホテルの支配人である主人公、ポールは
自分の妻など、ツチ族を勤務先であるホテルに匿う。
ホテルで持ちこたえている間に
ルワンダに介入しているヨーロッパ諸国の多国籍軍によって
ツチ族たちが安全な場へと逃げられることを
ポールは期待するが、
国連は一度起きた虐殺を止める役割を担えず、
多国籍軍もルワンダから撤退していく。
外国人がルワンダから撤退していく流れの中で
ホテルにいた外国人たちも
国連の警護によってホテルを離れる。
ベルギー系資本のホテルの支配人という地位に立ち
支配層側に立っていた気になっていたポール含め
ルワンダ人は国際的に見放されるという結果になった。
ポールたちは外国のツテを頼り助けを求める。
事態は好転し一部のツチ族に出国ビザも出た。
ホテルから脱出したが、脱出の情報はフツ族に漏れており
待ち伏せしていたフツ族に狙われ、彼らはホテルに逆戻り。
これを見た感想は、世の中って不条理。
この主人公は想像通り、助かるんだけど、
みんながみんなそんなラッキーに恵まれてる訳でなく、
この紛争によって100万人近い人が命を落としたと言われている。
そして、こうした紛争はルワンダ紛争終結後も
コンゴ民主共和国などで内紛が起こり、
まだ情勢は安定化していない。
どの時代のどの国に生まれるかによって人の運命は大きく変わり
紛争が起きれば人の命なんてとてもあっけない。
ある地域のある人が助かっただけでは
その人がたまたま恵まれてたわけで
その外ではたくさんの人が死んでいるわけで
「良かったね」とは心から思えない。
いろいろ考えさせられた映画だった。

10月22日

映画「三月のライオン」

下で取り上げた矢崎仁司監督の出世作。
一組の兄妹の物語。
妹は兄に恋をしていた。
兄は事故で記憶喪失となり、妹は兄に自分は恋人だと偽る。
兄は妹と愛し合う過程で、自分は事故前女性を愛していた
(自分には恋人がいたこと)を思い出し
そして妹の正体も知ることになる。
そんな折、妹は兄の子を妊娠し…
かなりネタバレさせてしまったがこんなあらすじ。
作品の世界がリアル。無理がない。
話の転換がスムーズだし、
途中で何かに引っかかることなく作品を見ていられる。
妹がちょっと不思議ちゃんなんだけど、
この不思議な感じもリアル。
普通の人が不思議ちゃんを演じると
支離滅裂になることがあるけど、
この妹はキャラが一貫している。
不思議ちゃんって欲求や思ったことに忠実で
そんな様子が普通の人とは違ったりするんだけど、
でもその言動は彼女の一貫した価値観に基づいている。
支離滅裂で不思議なのとは違う。
そんな不思議ちゃんがリアルにスクリーンに映し出されていた。
わかりやすい映画ではないんだけど、
矢崎監督に興味を持った人は見ておいて損はない。
このキャラを一貫させた描き方は
「ストロベリー〜」でも貫かれていて
だからこそ原作にないエピソードがいろいろあっても
あの映画はストレスなく見ていられたと思うから。

10月14日

映画「ストロベリーショートケイクス」

魚喃キリコ原作の同名マンガの映画化。
魚喃の作品が持つ痛々しさが伝わる作品になっていた。
これ、DVDで見ていたら2回は途中見てられなくて止めたと思う。
原作にない描写やエピソードも目立ったが
それはそれとして映画は映画として世界が完成されていた。
映画を観た後、改めて原作を読み返したら
映画は原作よりも話がわかりやすくなっていて
結末で読者に委ねてる部分が少なくなっている。
私が経験してきた恋愛なんてとても少なく、
世の中には私が知らないようなたくさんのバリエーションが
恋愛にはあると思うけど、
それでもこの映画は若い人の恋愛をうまく描けてると思う。
映画を観ながら登場人物に言いたいことが出てくる
というのは話がうまく描けているということだと思う。
尽くしてしまうちひろ(中越典子)には、
彼氏が自分を何者かにしてくれるのではというような
自己実現を彼氏に求めるなと思ったし
自分が誰かの役に立っていると思いたいとか、
自分が自分らしくいられていない現実からの逃避
として恋愛するのは、自分、相手以外が出てくるから
それはいい結果を生まないとか、
二人の関係はずっとはテンションを足してはいられないとか
ちひろを見ていたら思うことはたくさんあった。
作品の世界観を伝えるために映画にはないが
原作の台詞の一部を引用。

 あたし"恋がしたい"んじゃなくって、
 恋をしてる相手にッ"息も止まりそうなほどに
 "強く抱きしめて"欲しかったんでスよッ

逆に言うと、世の中には彼氏を作ろうと思って
作れてしまう女子がいるわけで。

9月23日

映画「キンキーブーツ」

紳士靴メーカーの4代目社長チャーリーが主人公。
市場が低迷し、取引していた問屋が倒産。
実父である先代社長も工場の売却を考えていた。
自分の代でつぶしたくないと考えたチャーリーは
他社が登山靴などに参入したように
自社も参入できるニッチな市場を模索する。
彼はドラッグクイーンのローラと出会い、
男性の体重を支えるセクシーな女性靴、
「キンキーブーツ」をドラッグクイーンに向けて開発する。
映画はこんな感じで始まる。
それで最後はハッピーエンドなんだけど、
キンキーブーツを作りながら、
婚約者に振られ、男らしさとは何かと考える
主人公の葛藤が途中あって
その姿がとても人間的で、
見ながら映画の世界に引き込まれた。
多くの人が迷いにぶつかるとそうであるように、
チャーリーもまた、そういうもやもやを
吹っ切らなければならない状況になり、
それを乗り越えようと行動する。
いい映画だった。



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