8月28日

評論「マンガ産業論」(中野晴行)

マンガは90年代初頭になぜあそこまで隆盛を極め、
なぜ90年代後半から現在にかけてここまで落ち込み、
マンガの危機が叫ばれているのか。
これが本著の内容だ。
マンガ雑誌の隆盛の秘密に
自由なお小遣いのもとに子供が自分の判断で
マンガ雑誌を買うようになった、高度経済成長以降の
子供の消費性向を結びつける考察には
他で出会ったことがなかったものだし、
(買う、買わないに親の判断が加われば、
子供が読みたい=売れるとはならないのは当然だ)
いろいろと紹介したいのだが、
ここではマンガ雑誌の衰退に絞ってレビューを書きたいと思う。
マンガ雑誌の衰退が激しいのである。
本著によると、95年に15億9475万部だった発行部数が
99年には13億8254万部まで落ちている。
かく言う私も定期的に読んでいるマンガ雑誌がない状況だ。
この状況を筆者は憂っている。
これまでのマンガの発展はマンガ雑誌が担っていたからだ。
雑誌連載、単行本化、アニメ化ドラマ化と、
マンガの収益性が上昇するにも、
まず雑誌連載ありきという状況はずっと変わっていない。
マンガ雑誌の落ち込みは、
コンテンツビジネス全体の落ち込みをも危惧させるものなのだ。
マンガ雑誌が落ち込んでいる原因は
当たり前の話だが、新たに読み始める読者よりも
読むのを止める読者のほうが多いからだ。
新たな読者をいかにして取り込むか。
各出版社はいろいろと試みを行っている。
少女誌の一部は掲載作品を全て読みきりにしたり、
コミックスの続きが現在発売の雑誌で読めるように
コミックスと雑誌のスケジュールを調整したり。
青年誌レディス誌でよくあるのは
過去の少年誌少女誌作品のリバイバル。
以前マンガ雑誌を読んでいた人に
またマンガ雑誌を買う習慣をつけさせようというものだ。
コミックと雑誌のスケジュール調整には出版社の努力を感じるし、
個人的にはこれがマンガ雑誌の
売上増につながればいいなと思う。
本著を読み終えて「久々にマンガ雑誌を
買ってみようか」という気になった。
単行本を追いかけているだけだと
情報不足になってしまう状況を感じていたところだった。
現在私が新刊が出るたびに買っている作家は4人。
うち2人は大学時代から変わっていない。
いま誰が面白い作家なのかの情報が入りづらく、
以前から好きな作家を追いかけるという保守的な状況だ。
書店のコミックコーナーで「面白そうな作品がないぜ」と
嘆くからにはもうちょっとアンテナを張っていたいよな、
マンガ好きとして。と思ってしまう、
マンガ業界にとっていい人過ぎる私なのだ。



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