小説「間宮兄弟」(江國香織)
女性との交際経験がない兄弟が主人公。
恋愛小説って「ちょっといいな」と
思わせる男性を登場させないと
話が続かなくなりそうだが、
280ページの中編小説にまとめ上げるとこがさすが。
これまで交際経験がなかった男性が
急に魅力的になるなどということがなく、
兄弟ともに結局女性と結ばれることはない
ラストなのがリアリティがあって読めた。
いままで恋愛を語る上で無視されてきた
モテない男性に焦点が当てられていて、
それがモテる男性を引き立たせるためでなく、
ただモテない男性を好意的に描いているのが新鮮だった。
モテない男性にはその理由が
きちんとあるのは間違いのだが、
ただ、彼らにもいい部分があるのも確か。
兄、明信の自分に自信がないところや
弟、徹信の独善的なアプローチは、
「やっぱりね」と思わせる部分だが、
誰かを陥れたりしようとしない
明信ののんびりした部分はそれが良さであるはず。
こういった男の良さは
従来の恋愛小説では描かれてこなかった。
私の友人でも性格の良さでは
折り紙付きの男がいるのだが、これがさっぱりモテない。
彼を含めて飲んでいてコイバナになると
私は秘密を握っている気分になる。
「こいつはこんなにいい奴なのに
この良さに周りの女性は気付かないなんて!」
この小説を読みながら私は
秘密が知られてしまった、
悔しさを似た気持ちをふと感じてしまった。