「止まらない風」


止まらない風

空の模様は全く変わらずにいる

一定のスピードのまま変わることなく

風が吹きつづけているから

空の模様は変わらないけど

私達は何処かに向かって

確実に流されている

行く先に気づくことも出来ないで


                                    8・16・00 


「タクシー」


出会いなんてタクシーをつかまえるようなものだから

その人と一緒にいられるのは目的地まで

また同じ人に出会えることを願ってみても

その頃運転手は別の人を乗せている


                                      8・30・00


「アンサンブル」


声が空気を震えさせる

振動が私の身体へと正しく伝わる

音量も 音の強弱も 音程の高低も

全てが私の身体の息遣いと調和する

センスの良さ

演奏装置に一番大切なもの

名器を名器たらしめる

独立している名器は名演奏を奏でる


                                      11・16・00


「緑色の恋人」


静かに海を見ていたい

碧い海面が空を黙らせ

白い波が砂浜を黙らせる

砂っぽい潮風も無言で照りつける陽射しも

海の大きさに微笑を浮かべる

海は何も言わない

ただそこにあるだけ

しかしその存在の大きさに

周りのものすべてが黙りこくる

その沈黙が私に気付かせる

海のような大きな存在が

今の私の周りには存在していないことを


私を守ってくれるものは?

私の目はキョロキョロと右往左往する

私は時間を止めて探し回る

まだ見つからない


もうどれくらい探し続けているだろうか

そろそろ時間を戻さねば

玉手箱を開けなければ

まだ探し物は見つかっていないけど

「見つかるまでは」と

玉手箱を開ける勇気が出せずにいる間も

時間は矢のように走り去っているんだ

自分を変えようというベクトルの方向も

このままでは過去に取り残され

時代とのズレの中に忘れ去られていってしまうんだ


                                               12・11・00


「小さな活動家たち」


私の中の小さな活動家たちが声高に主張する

「私たちは社会に自分たちの感性を主張したいんだ!」

私という殻の中に 決して収まろうとしない彼らたち

個々の活動家が それぞれ主張し合う

調整役の私の脳は 活動家たちを把握するので精一杯

私の目に映るものさえも 活動家たちによって違って映る

それは私の外にある 社会という世界に対し

私は自己主張してこなかったから

社会と一つの視点を共有するために

自分自身の中で視点を統一するようなことをしてこなかったから

他者は分かり合える存在で

分かり合えるところだけ分かり合えればいいと

自分の視点でしか社会と接してこなかったから

分かり合えない部分を分かり合うための努力を避けてきた

必要なのは 自販機のように 望んだものが出てくる関係

それは依存ではなく 共存でもなく

予め決められた使用契約


活動家たちの主張で 私は混乱しているのだ

予め決められたマニュアルは 社会を動かす感情をも規定できるものではない

社会への順応は 私を没個性的な社会の歯車にしてしまうのか

社会に対し 私の感性は何なのか

社会が求めている私は 一つではない

私は 私を規定しうる 様々な要因の中に

全てを曝さなければいけない

社会への順応とは そういうことだと 私をメディアは教育する

小さな活動家が多ければ多いほど

混乱は複雑化し 社会が複雑なものに映る

メディアは 小さな活動家を増殖させ

社会の荒波の波頭を増やす


                                                  1・28・01


「狂気の中で生活する言葉」


私の言葉は 私の孤独を解決してはくれない


私には住むところも 着るものも 食べるものもある

これら全ては他者への依存であり

私の生存権は彼らの手中だ

顔の見えない第三者は 私を孤独にさせる


誰とも会わず

景色の変わらない街に埋没した日々

街は見えない壁に囲まれ

壁の外は 私の知らない世界


生きるために必要なものは 全て揃っている

私は街の中を歩けばいい


時には 雨が街中の歩行すら阻害するが

天候は雨と晴れを繰り返す

停滞と運動の繰り返し


私の心臓はしっかりと脈を打ちつづけ

呼吸は規則正しく繰り返される


孤独は 街の呼吸を狂わす

実際に街の呼吸が狂っているのか

それとも 街の呼吸が狂っているように 見えるだけなのか

私は 判断できない

狂気は 確実に 私の 中に 侵食している


孤独の精神に語りかけられる言葉たち

言葉は狂気の先にある 自殺を抑止するが

刃物のような息を飲む輝きは

決して 私を正気に取り戻しはしない


                                              2・05・01


「1000本の唖者たち」


強い西日が 冬の眠りから目を覚ます

白い束が刺さっている風景が 目の前に広がっている

白い束に刺された大人たちは 口が利けない


強い西日の微笑みに打ち克つために

西日を覆い囲うような 広い肩幅と厚い胸板を手に入れたいんだ

そしてもう一つ 

意味を超越する強靭な言葉を

唖者たちを更に深い沈黙に導く

静かな静かな言葉を

                                          4・16・01


「前に向かって バスを乗り継ごう」


今まで失ってきたものの記憶は とても儚い

それは 失ったのではなく

  新しく来たものと入れ替わっただけなのかもしれない

遠い昔のような 時間で薄められたような 喪失感

私の未来は 常に 今あるものが決めてきた

今ある仲間 今の私の感情

未来を変えるような 大切なもの 私にもきっとあるはず

そんな宝物を 私は失ったことがない

宝物を失った事のない私

異性が 遠く感じる瞬間

宝物の喪失ではない 価値観の変化

自分の未来と 他者の未来の ズレ

自分は自分の未来を進み 他者を追いかけずにいた

私は失恋を知らない

私は 他者に乗っからないから

他者は伴走者であり 進む方向が同じ限り 一緒にいるものだから

右に曲がるバスを見送り 私は直進するバスを待つ

                                           4・30・01


「答えが出ないもの」


誰かと繋がっていたい

私の進む先が

より良い方向に進んでいるのか

それともその反対なのか

前に進むには

(私が今向いている方向が前=進むべき方向なのか?)

誰かと繋がっていなくては

私が広げた両手が風を受けとめる

指の間をすり抜ける風

すり抜けた瞬間 非常に惜しい気持ちが襲う

私は風を求めているのか?

いや きっとそうではないだろう

私と誰かを繋げるもの

それは絆?

何が絆なのか?

メールを出して 返事が返ってくれば

それは絆?

私は他者に何を求めているのだろう

私は 自分でも分からない何かを 求めている

                                         6・21・01


「globe - love = ?」


この世から愛を奪ったら何が残るだろう?

この世から愛を奪ったら 憎しみは消えるのだろうか?


この世から愛がなくなったら 殺人はなくなるだろうか?

この世から愛がなくなったら 

涙は飲み込めないほどにしょっぱくなるのだろうか?


この世が愛を失ったら 同時に悲しい歌も失うのだろうか?

この世が愛を失ったら 同時に知性も失うのだろうか?


政治の世界がこの世に求めているものは

それは 愛なのだろうか?

それとも別の何かだろうか?

統制は愛が形を変えたものなのだろうか?

                                         1・16・02




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