ニュー・ヨーク近代美術館


MoMA は現在改装中で、常設作品がハイライトでしか展示されていない。
ウォーホルの「マリリン」はあったけど。
モンドリアンの「ブロード・ウェイ・ブギ・ウギ」も見ることが出来た。
今まで写真などを通して見てきたが、
油彩なので絵の具の質を感じることが出来たり、とても絵画的だった。
もっと無機質かなと思ってた。絵の具がひび割れてたのが残念。
ウォーホルの"Holly Solomon"という作品があって、
これは、証明写真を使った作品。
MoMAに来て、ウォーホル・ミュージアムに証明写真の機械が
置いてあった理由が分かった。撮ればよかったなぁ。

5月21日までやっているゲルハルト・リヒター展がよかった。
この人はぼんやりとした絵を描く。
それはまるでピントのズレた写真のよう。
写真的な絵というと、写実的な絵を言うことがほとんどだが、
こういう絵もある意味写真的だなぁと思った。
展示スペースに入ってすぐ、"Stag"という作品がある。
黒と白の濃淡だけで、鹿の立体感をすごくよく出している。
彼の絵って濃淡がポイントなんだと、よくわかる。
"48 Portraits"という作品は、どの写真もとても写実的。
しかし、写真とは見間違えない。
それは写真より見た目の感じがやわらかいからだと思う。
不謹慎ながら、遺影に用いる肖像画を思い出した。
リヒターは1988年に"October 18, 1977"という作品を制作した。
これは処刑されたテロリストを描いた作品。
彼は政治的な作品を描く決心をするまで11年かかっている。
11年経っても描こうという気持ちが消えなかったところとか、
政治的な作品を描く姿勢がウォーホルとは対称的だなと思った。
犯罪を描いた作品は他にもあって、
彼が犯罪を写実的に描くと、
なんだか防犯カメラの映像みたいだなと思った。
リヒターは写真的な絵だけでなく、ポップ・アート的なのも残してる。
"Abstract Picture"は、絵の具の軌跡が残ってて、
ジャスパー・ジョーンズとの共通性を感じた。
"256 Colors"は、濃淡が異なる、黒、白、灰色の四角形が
キャンバスの上に整然と並んで描かれている作品。
モノクロなのが色鮮やかな他のポップ・アートの作品と
違っていて面白いなぁと思った。
"Gray"はキャンバスが灰色一色に塗られた作品。
ドナルド・ジャッドのような均質的なこういう作品も私は好き。

「Life of the City」という企画展も面白かった。
テロ前後のNYCの写真を集めたもの。
94年のWシリーズパレードの写真などもある。
これらの写真は1枚25ドルで売っている。
このお金は、子供たちを救う基金に使われる。
芸術的側面から復興を盛り上げるという
こういうの、阪神大震災で起こらなかったなぁ。
芸術に対する民度の差を感じてしまった。
いろんな写真に触れることが出来たのもよかった。
プラチナプリントの写真は銀塩よりもレトロな感じになって
こういう素材にも関心を持った。




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