メトロポリタン・ミュージアム


とにかく広い。
全てを展示していないと思うが、
所蔵作品は300万点以上らしい。
MET を見に行く日は、それ以外の予定を
入れないことをお勧めする。
私は閉館時間が20時45分までと長い金曜日に行った。
17時15分で閉まってしまう、日曜日、火ー木曜日では、
的を絞らないと、MET を楽しむのが難しいと思う。
土曜日も閉館時間が延長され、月曜日は休館日。
途中食事休憩はしたが、
私は、10時から19時30分頃までずっと、MET に居続けた。
ハイライトツアーに参加しなかったら
もう少し早くここから退出できたかもしれない。

ハイライトツアーは館内の作品を
1ジャンルにつき1作品説明するツアー。
日本語によるハイライトツアーもあるので、
ネットで確認してみるといいと思う。
これは、各ジャンル1作品しか取り上げないので、
そこでの説明はその作品の説明にとどまり、
ジャンル全体の説明といった総論的なものはなされない。
館内の作品を最初から一通り見る積もりの人には
あまり必要ないと思う。
学芸員が説明してくれる作品と自分が説明を聞きたい作品が
見事に一致する確率はかなり低いので。
MET 全体のハイライトツアーの他に、
ジャンルごとのハイライトツアーもある。
こちらの方が面白いと思う。
ただしこちらは英語のみ。
20世紀美術のハイライトツアーに参加したのだが、
学芸員のおばちゃんの英語が速くて、
聞き取れたのは2割以下。
ポップ・アートの色使いを、大量生産された
プラスチック製品の色を持ち出して説明したところ以外、
メモを取ることがなかった。
取り上げる作品と私の興味がここでも合わなかったりもした。
でも最大の理由は、私の英語力(笑)。

作品をじっくり見ようとすると、1ジャンルにつき
だいたい3時間くらいかかる。
そのため、私が作品一つ一つ前に立って
きちんと鑑賞したのは、企画展の一部と、
20世紀美術と磁器の常設展のみ。
企画展は、アーヴィング・ペンの写真展と、
シュールレアリズム展を鑑賞した。
磁器もすべて鑑賞したわけでなく、
白磁を中心とする13世紀以降の磁器だけを鑑賞した。
他の作品は、部屋の中を早歩きで回り、
その中で目に留まったものだけを立ち止まって鑑賞した。
館内の部屋は全て回ったのだが、
それだけでも時間がかかるし、足が疲れた。

20世紀美術を20世紀初頭から年代順に観ていくと、
斬新な美術にすっかり慣れてしまった私には、
ローゼンクイストの作品とかが保守的に見え、
「メトロポリタン美術館って歴史あるところだし、
斬新なものは苦手なのかな」と思った。
しかし、Yves Tanguy の"The Satin Tuning Fork"は
かなり前衛的だった。シュールレアリズムの作家で、
彼の作品を「虫っぽくて嫌」と言う人もいるかもしれない。
また、今あるコレクションに満足せず、
Joel Shapio の"Untitled"は2000年の作品だったり、
新しい作品も所蔵している。
Matisse の"The Young Sailor"を観ながら、
太田蛍一の絵って鼻筋の立体感とか、
キリリとした眉や目元の感じとか、
マティスのこの絵の延長だななんて思った。
「ダンス」とは雰囲気がまったく違うので、
「ダンス」しか知らない人にぜひ観てほしい。

ブラックやピカソが好きな私にとって、
彼らのようなキュビズムの作品が
とても充実していたのがとても良かった。
Roger de La Fresnaye の作品は、
ブラックのような暗い感じの色彩で良かった。
Juan Gris もキュビスト。Arthur Dove、Fernard Leger は
ブラックやピカソよりもっと強い線を描く。
デザインの展示も面白かった。
オリンパスの「μ」やCleto Munari の腕時計など、
市販されてる製品が展示されている。

最後に全体的な感想。
いろんな画家のいろんな作品に触れることができた。
アングルの作品を観ながら、
「彼って他の19世紀の画家と比べて知名度が低い気がする」
なんて思ったのだが、それって、日本人の美術への関心が
印象派とルネッサンスに偏りすぎてるからかもしれないなぁ。
あと、北大路魯山人などは"Kitaoji Rosanjin"と表記されるのだが、
20世紀美術の作家の場合、「名・姓」で表記されてて、
日本人名の表記が統一されてないのが興味深かった。
西洋美術の世界に入ってくるものには、
西洋の「名・姓」の表記を受け入れてもらうみたいな
そういう彼らの世界みたいなものを感じた。



 
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