2月28日

マンガ「テイク イット イージー」(岡崎京子)

大学受験が近づくと思い出すマンガその2。
小さい頃は「神童」と呼ばれた主人公の弥七郎。
高校時代まではモテモテで申し分なかったのだが、
現役時に受けた大学はすべて落ち、浪人生活を余儀なくされる。
小さい頃馬鹿にしていた真吾は、ワセダに現役合格。
その他の私大すべて落ちてワセダのみ受かったこの事件は
゛バカ真の奇跡"と呼ばれている。
浪人生なのにノーテンキな弥七郎の1年間が話の舞台。
同じく浪人のトモジ、専門学校生の千代子、真吾など
幼馴染みがそれぞれのキャラクターを発揮し、話が進んでいく。
浪人生なのにまるで勉強していないので、
弥七郎の目の前には家業の蕎麦やが目の前にちらつくが、
ジジイに頭を下げて家業を継ぐのは弥七郎のプライドが許さない。
家の中でもうだつが上がらない弥七郎は、兄の弥一郎と比較されてしまう。
出来が良くて評判も良かったが自殺し、今はいない兄、
浪人生という不安定な立場など、
弥七郎の周りにはコンプレックスとなるものが取り巻いている。

2月27日

マンガ「おしゃべり階段」(くらもちふさこ)

大学受験が近づくと思い出すマンガ。
話の舞台は、中学2年から浪人1年目の合格発表まで。
私はこの話の後半が好きなので、受験勉強、大学受験の描写が印象深い。
男性の視点でこのマンガを読むと、「とんがらし」真柴くんが、かわいそうで仕方がない。
あれほどまでに加南のことが好きなのに、加南の心は、線に向いていて、
真柴くんの片想いは実らない。
真柴くんが加南にアプローチしている段階では加南と線は付き合っていない。
好きな人がいるのだが、その人と付き合っていなく、
そこに別の異性がアプローチしてきたら、
「それほどまでに私のことを想っているのなら」と
付き合ってしまうのが私の恋愛観。
もちろん、よほど自分と合わなければ別だが。
付き合うことによって始まる恋愛もあると思うし、
付き合うことによって初めて分かるその人の良さがあると思う。
大学受験がうまく行かなかった思い出のある人は
加南に自分の姿がダブるのでは。
勉強しようと思いつつ全くはかどらなくて、
また、ちょっとしたことにすぐ凹んでしまう
あんなナーバスだった時期が懐かしい。

2月25日

『ファット・アルバート・ロウタンダ』(ハービー・ハンコック)

フュージョンへの移行期であることが感じられるアルバム。
5曲目の「ジェシーカ」のように
アコースティック・ピアノがきれいなゆったりとしたバラードあり、
1曲目の「ウィーグル・ウェーグル」のようなノリノリのファンクあり。
4曲目の「ヒヤー・ヒー・カムズ」のように、ソウルフルだけど内省的な静かなメロディもあり、
これ1枚にソウル・ミュージックのあらゆる側面が詰め込まれている。
動的なソウルは、ホーンに電子ピアノが重なり、「音の足し算」なのだが、
静的なソウルは、ギターから、ベース、フルートへとつながる感じが、
ギター=ベース=フルートと、「音の等式」を成立させている。
テンションがあがっていく足し算ではなく、一定のテンションを維持していく感じ。
ラストの7曲目の「リトル・ブラザー」のワクワクする感じがなかなかいい。
映画音楽に使われそうな、適度に速いビートが心地よい。

2月23日

『ジョン・メイオール&ザ・ブルース・ブレイカーズ・ウィズ・エリック・クラプトン』
(ジョン・メイオール&ザ・ブルース・ブレイカーズ・ウィズ・エリック・クラプトン)

クリームでブルースに傾倒したロックをやっていたクラプトンは、
クリーム結成前にジョン・メイオールのブルース・ブレイカーズに参加していた。
その時に残した作品。
白人がエレキ・ギターを使ってブルースをやるとこうなる。
クリームのブルージーなところが好きな人にはお薦め。
戦前にアメリカの黒人が演ったブルースのような素朴さ、生活感はないが、
エレキ・ギターは唸りをあげ、体が揺れるような感覚を満喫できる。
この揺れる感覚はクリームより強い。
クリームのアルバムを聴きながら踊り出すことはないが、
このアルバムは聴き手を踊り出させる。

2月14日

『HAMMER MUSIC』(UP-BEAT)

ヴァレンタイン・デイに因み、
『チェット・ベイカー・シングス』を取り上げようと思ったのだが、
10月11日に取り上げていたので、これをセレクション。
1曲目に「Rainy Valentine」が収録されている。
80年代っぽいロックで、コーラスが絡んでいたり、少しメロディアス。
氷室京介らのボウイなどと共通した雰囲気がある。
この曲のプロデューサーは、佐久間正英。
メロディが突飛でないので耳馴染みやすく、
この時期になるとつい、"Rainy Valentine 雨に打たれながら〜"と
つい口ずさんでしまう曲。

2月8日

映画「ベニスに死す」

ストーリーを簡単に説明すると次の通り。
ベニスでは、コレラが蔓延していた。
しかし、観光収入が街を支えているこの街では、
風評被害を怖れ、この事実が隠される。
この街を訪れた、作曲家である主人公は、
静かに訪れるこの死病の恐怖におびえる。
この映画の大きな魅力は、次の3つだ。
作中で使用される、マーラーによるきれいなクラシック音楽。
芸術家らしい、神経質な主人公のキャラクター。
主人公の心の支えになる、美少年、タージオ。
このタージオは、少女漫画からそのまま飛び出してきたような美少年。
色白で、頬はうっすらと赤みをさしている。
一言で言えば彫りが深い顔なのだが、
鼻筋がスッと一直線に通り、
額と鼻のTゾーンが、顔の中で、うずたかくなっているので、
目の周りのくぼみが深い。
タージオを見るためにこの作品を借りてきたとしても、
満足する人はいるだろう。
そして、大概の男性は、自分の顔と見比べれば、
タージオの顔にコンプレックスを抱くに違いない。

2月7日

映画「シュリ」

韓国の諜報員の恋人が、北朝鮮の女性工作員だった。
ラストのシーンは思わず息を飲む。
女性工作員が韓国大統領を狙おうとし、
恋人同士が拳銃を持って相対する。
ここで、諜報員が女性工作員を撃ってしまうのが、
南北問題の厳しい現実である気がした。

2月6日

映画「アッカトーネ」

ネアカなイタリア人の乾燥した感じと
働かないでいる頽廃した主人公たちの湿っぽさが融和した
切なくて暖かい映画。
この映画の最大の魅力は
面白いストーリーではなく、主人公アッカトーネのキャラクター。
アッカトーネの弱さが自分の弱さと共鳴する。
そうした受け手の弱さが慰められ
観ていると元気が出てくるような映画ではない。
この映画にあるのは偽善や作られたものでなく
怒り、強がりといった
誰もが持っている人間の性質である。
主人公がチンピラという設定では
怒り、強がりは、ナイフのようなあぶなさを持ち
自分の気持ちを制御出来ないあやうさをも持つ。

2月4日

映画「中国女」

マルクス主義や毛思想を学ぶフランス学生たちが出てくる。
フィルムの中で時間軸は進んでいるが、
ストーリーの流れはしっかり決まってなく、
断片的に話がつながっている。
演出の手法がどこか他の映画で見たことある感じなのは、
多くの監督がこの映画の監督、ゴダールの影響を受けているからだろう。
マルクス主義についてよく分からなくても、
登場人物のかっこよさはよく分かる。
洋服が好きな人は、登場人物のファッションを見るのが楽しいと思う。
ただ私は、この映画を見ながら、
政治学を勉強していて良かったと思った。
豊かな生活を送っているフランス人が
労働者について語っているのがポイントだと思う。
共産主義についてもいろいろ考えたが、
共産主義に対する私の認識に自信が無いのでここには書かない。
米ソ冷戦が終焉した今、
低所得層の生活を向上させるにはどうしたらいいか
この映画を見ながら考えてみるのもいいかもしれない。

2月3日

映画「ぼくの国、パパの国」

サミュエル・ハンチントンの「文明の衝突」読むと、
西洋社会がイスラム社会を異端視しているのを感じる。
実際、そういった面はあるだろう。
さて、ずいぶん堅い書き出しだが、
今日取り上げるこの映画はあまり堅く考えなくても楽しめる。
イギリスに移民したパキスタン人の家族の話。
イスラムの教えに厳格なパキスタン生まれのお父さんと、
イギリス生まれで、イギリス人を母に持つ子供たちの話。
つまり、主人公であるお父さんは、イギリスに移住し、
そこで結婚し、子供が出来た。
イギリスでも、お父さんはイスラムに厳格であろうとするので、
いろいろなズレが起きる。
そのズレをおかしく描いている。
何故、私たちがおかしいと感じるかは、
自分の文化を正しいものと捉えているからである。
私はこの映画で、イスラム文化と自分たちの文化の差異を感じながら、
制作者の意図通り、笑い飛ばしていいものかと考えてしまった。
宗教とは、民族、地域といったものを基に形成されていった。
暑い気候で生まれたイスラムを、
イギリスで実践しようとすれば、ズレが生じるのは仕方がないことだろう。
それぞれの文化にそれぞれの価値観があり、
どの考えが正しいかを容易に結論付けることは出来ない。
印象的なシーンがあった。
父親に反発する子供に対し、
「イギリス人はパキスタン人を受け入れないんだ。
イスラムは白人も黒人も無い。平等なんだ」
といった趣旨の発言をする。
これが現実なのだろう。
そして、こういった現実があるからこそ、
世界各地に「○○人街」といったものが形成されるのだと思った。
日本人に比べ、宗教の問題が深刻なので、
異教に対しナーバスなのもわかる。
無理に酒を勧める男が「宗教で飲めない」と言われ、
勧めるのを止めるシーンは印象的だった。



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