2002年マンガ回想録

魚喃キリコ、高野文子がそれぞれ新刊を刊行した。
「strawberryshortcakes」、「黄色い本」とも楽しませてもらったが、
私は彼女たちにはとても大きな期待をしており、
その高い基準には少し達していなかったので、
ここは敢えてこの2作品は外して
2002年に刊行されたお薦めマンガを
ここで紹介していく。



 1. 「こうして猫は愛をむさぼる。」(小野塚カホリ)

 作品全体のまとまりの良さがとても私好みな短編集。
 特に好きなのは2話目の「きみの手を取り、海へ逃げよう」。
 東京に住む姉に会いに行く梢が、
 切符をなくしたりしてその都度
 同じ電車で東京に向かっていた波戸に助けられ
 成長していく様子が読んでいてほほえましい。
 梢と波戸がくっつくところはお決まりだけど。
 好きな人を思いやることで人として成長する
 というのも新しい話ではないんだけど、でも好き。
 耕野裕子の「CLEAR」とかも私好きだし。


 2.「銀河ガール パンダボーイ」(かわかみじゅんこ)

 最近の何考えてるかよくわからない若者がよく描かれてる短編集。
 作家が持つあるべき若者像みたいなのを投影させることも
 若者のよき理解者となって迎合することもなく、
 若者たちが何かを感じ行動する様子を描いて話を展開ている。
 こうしたある感情やある行動をそのまま切り取るように描く作品が
 最近人気だと思う。私も気に入っている。
 こうした作品が支持されるには、読者の共感を得そうな感情や行動を
 様々な感情や行動の中から選び出さなければならず、
 そうしたものを選び出すかわかみじゅんこのセンスと
 私の感性が読んでいてピンときた。
 収録されている「クラブハリケーン」の登場人物達の様子、
 自分の周りすらきちんと見えていなくて
 ちょっとしたことで不安になってしまう思春期の様子を
 読んでいて思い出した。
 ここで描かれた不安の種類に共感できた。
 困惑した末、自ら目の前の選択肢を放棄してしまうとことか。


 3.「セックスのあと男の子の汗はハチミツのにおいがする」(おかざき真里)

 これも短編集。
 一番好きなのは「雨の降る国」。次に好きなのが「アイスティー」。
 欲しいものがあるんだけど、自分自身何が欲しいのかわからない。
 そんな出口のない感情が支配する思春期。
 「雨の降る国」を読みながら
 主人公と一緒に苦しい思いに駆られた。
 日頃自分の感情を周りに合わせてごまかしているからかもしれない。
 強い感情の吐露に触れると、
 自分の在り方が問い掛けられているような気になる。
 「アイスティー」が好きなのは、
 作中でYMOや大滝詠一のアルバムが出てくるから。
 2つの作品の出し方もいい。
 私もいろんな音楽を背伸びしながら聞いたし
 音楽を背伸びして聞く中学生に懐かしい思いを覚えた。


 次点 「記憶の技法」(吉野朔実)

 自分の出生の秘密を知ろうと華蓮は旅に出る。
 修学旅行をサボって子供のころ住んでいたはずの福岡へ。
 そんなミステリーの要素があったので、
 どんどん読み進めていけた。
 主人公が成長していく話が好きな私にとって
 「自分探しの旅」はグッとくるポイント。
 で、すごいかわいそうな秘密を探り当ててしまう。
 でもこの秘密を知ったことで華蓮は
 過去を乗り越え、とても強くなった。
 華蓮はとてもいい人たちに囲まれてるし、
 これから先、華蓮の周りはもっと好転するのではと
 思わせるラストになっている。
 それまでも普通の女子高生として生活を送っていて
 特別不幸というわけではなかったんだけど。


 総括

 最近のお気に入りが望月花梨だったり、思春期や主人公の成長に弱い私。
 そういった要素がある話が自然とランクイン。
 短編集ばっかりになったのは、A5版のコミックスを探し求めてると、
 (この版型でコミックス出される作家に好きな人が多い)
 この版型って短編集が多くて手にする回数が多かったからだと思う。
 あまりに長い長編は避けがちだけど、
 短編集が特に好きというわけでもない。1冊読み切りもよく読むし。
 祥伝社ばかりなのは、装丁が私好みで
 書店で私が手に取りやすいというのがあるかも。
 




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